論文



プレプリント

10. Lattice structure in cluster algebra of finite type and non-simply-laced Ingalls-Thomas bijection
arXiv:2211.08935

9. Positive integer solutions to (x+y)2+(y+z)2+(z+x)2=12xyz
arXiv:2109.09639

出版論文

8. Generalization of Markov Diophantine equation via generalized cluster algebra
松下浩大との共同研究
Electronic Journal of Combinatorics 30 (2023), P4.10. | arXiv:2201.10919

7. Positive cluster complexes and τ-tilting simplicial complexes of cluster-tilted algebras of finite type
Communications in Algebra, 51 (2023), 2830–2876. | arXiv:2105.07974
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正団複体という,団複体から初期団変数を含む単体を全て取り除いた部分単体複体を定義し,特にこれが有限であるような場合について調べた論文.当時1学年上の先輩だった榎本悠久さんから「有限型道代数では直既約成分の個数が一定の基本リジッド加群の個数はその箙の向きによらず一定になるけど,この話って団代数的に解釈できないの?」(若干うろ覚え)みたいなことを聞かれて考えた結果生まれた.正団複体の多元環の表現論側の対応物は基本τリジッド加群を単体とするような単体複体であり,これと同じものを1990年代ごろに代数が遺伝的である場合についてRiedtmann, Schofield, Happel, Ungerらが調べていたが,当時はまだ団代数が誕生しておらずまたτ傾理論も未成熟だったために,より対称性の高い団複体の部分複体という観点がなかった(はずである).この論文ではその点に着目することにより,基本リジッド加群の個数を道代数の場合だけでなく団傾斜代数の場合についても考えることができるようになった.箙の沈点(sink)を源点(source)に置き換える操作を箙変異の特別な場合と見なす点がこの論文の肝である.ちなみに,この論文では交換行列がA,B,C,D型Dynkin図形に対応する場合の正団複体の具体的な形の記述を与えているが,A,B,C型がランクが1つ下の団複体を使って比較的綺麗な形で表されるのに対して,D型の形は正直あまり綺麗とはいえず,そのせいでこの型だけめちゃくちゃ手こずってしまい,D型のDynkin図形がちょっとだけ嫌いになった.


6. Bongartz completion via c-vectors
Peigen Cao, 百合草寿哉との共同研究
International Mathematics Research Notices, 2023 (2023), 13099–13135. | arXiv:2106.11668
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団代数のc-vectorを使って,多元環の表現論における「Bongartz完備化」と呼ばれる操作の類似を与えた論文.元々,多元環の表現論の文脈では部分的傾加群(partial tilting module)から,それを含むような傾加群の中で(ある順序関係において)一番「大きい」傾加群を取り出す操作のことをBongartz完備化と呼んでおり,この操作はAdachi-Iyama-Reitenの論文τ-tilting theoryによってτ傾加群の場合に拡張されていた.団代数の団と対応する代数のτ傾加群は良い1:1対応を持っているので,それを踏まえると団代数側でも「団の部分集合から一番『大きい』団を取り出す方法」が存在するんじゃないか?と考えていたところ,Cao-Liの論文The enough g-pairs property and denominator vectors of cluster algebrasでg-vectorを使ってBongartz余完備化に相当するものを定めていたので,これもしかしてg-vectorの双対であるc-vectorで同じようなことするとBongartz完備化が出てくるんじゃない?と思ってCaoさんに色々聞いたところ,どうもうまくいきそうだということになって論文を書く運びとなった.途中から百合草さんも加わり,自分の中では初めての3人共著による論文である.


5. Cluster duality between Calkin-Wilf tree and Stern-Brocot tree
Advanced Studies in Pure Mathematics, 88 (2023), 491–516. | arXiv:2009.06473
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Stern-Brocot木とCalkin-Wilf木という既約分数を頂点に持つ2つの木をマルコフ型団代数を使って構成しましたという論文.Stern-Brocot木の方はwell-known to expertsというか,知られている事実から割と簡単に辿り着ける事実というような感じだが,Calkin-Wilf木の方は割とそうでもないんじゃないかと思って論文として書いた.Calkin-Wilf木は近年大阪大学の学部入試で出題され,日本国内では非専門家の間でも微妙に知名度が上がっていた概念であるが,それを知った私の知り合いの社会人である杉山聡さんから「これって団代数的に解釈することはできるんですかね?」と聞かれ,考えてみたところ,マルコフ型団代数からStern-Brocot木を取り出す方法と全く双対的な方法で取り出せることがわかった.奇しくも,Stern-Brocot木が団代数の通常のmutationから取り出される情報なのに対して,Calkin-Wilf木は私がよく研究していた初期シード変異から取り出される情報である.なお,当初団代数のfベクトルから分数を構成する方法で証明を与えていたが,dベクトルから取り出す方が証明が簡単になることに気づき,論文を大幅に修正した. 研究のきっかけはどこに転がっているのかわからないものであると痛感させられた.杉山さんに感謝の意を表したい.


4. Compatibility degree of cluster complexes
Changjian Fuとの共同研究
Annales de l’institut Fourier, online first. | arXiv:1911.07193
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fベクトルの成分を用いて団複体における整合性次数を定義し,その性質について調べた論文である.元々,オリジナルの整合性次数は有限ルート系における概正ルート(正ルート全体と負の単純ルートの和集合)のペア全体上に定義される非負整数関数である.この関数が0であるようなペアを整合的ペアと呼び,互いに整合的であるような元の集合を単体とするような単体複体を一般結合多面体と呼ぶ.この一般結合多面体と,有限型団代数から変異を使って定義される団複体と呼ばれる単体複体は(単体複体として)同型であるという事実が存在する.なので,この同型を使うことで有限型団複体には整合性次数を自然に定義することができる.有限型団代数に定義されるこの次数については,「2つの団変数の整合性次数が0であることと,その2つの団変数を両方含む団が存在するということが同値」であり,さらに,「2つの団変数の整合性次数が1であることと,その2つの団変数は1回の変異で入れ替わる関係にあることが同値」であるという重要な特徴づけが存在する.この論文では,この整合性次数をルート系ではなくfベクトルの成分を使って再定義した.ルートを用いた定義は有限型の団複体にしか適用できないが,fベクトルを用いた定義では一般の団複体に適用できる.しかも,ルート系で定義した有限型の団複体整合性次数とfベクトルの成分を使って定義した有限型団複体の次数は完全に一致しており,その意味でfベクトルによる定義はルート系を使った定義の拡張概念になっているということができる.同じように整合性次数を一般の団複体に拡張する研究はCao-Liによって行われていた(The enough g-pairs property and denominator vectors of cluster algebras)が,あちらは定義としてdベクトルの成分を用いている.dベクトルではなくfベクトルを使ってこの次数を定義する利点は,有限型の場合の整合性次数が0,1となる場合の特徴づけが,dベクトルによる拡張では保たれないのに対して,fベクトルを使った場合は保たれる点である.その意味で,fベクトルを使った整合性次数の拡張はdベクトルの場合よりもより「良い」拡張であるということができる(正確には,この論文では有限型の場合の整合性次数が1の場合となる特徴づけは部分的解決にとどまっているが,dベクトルの方には既に反例が判明している).この論文は,3本目の論文をarXivに置いたときにコメントを寄せてくださったFu氏とやりとりをするうちに着想が生まれたもので,結果的に3本目の論文で指摘したfベクトルとdベクトルの類似性をより広いクラスで指摘する論文となった.この論文はfベクトルという研究対象に注目し続けた自分の研究成果の集大成とも呼べるような内容であり,1〜3本目の論文の内容を伏線として回収するような形になっている点が個人的にすごく気に入っている.また,一緒に共同研究しようと声をかけてくださったFu氏あっての論文でもあり,彼には大変感謝している.


3. Relation between f-vectors and d-vectors in cluster algebras of finite type or rank 2
Annals of Combinatorics, 25 (2021), 573–594. | arXiv:1904.00779
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有限型の団代数において,1本目の論文で定義したF行列の列ベクトル(fベクトル)と団変数の分母ベクトル(dベクトル)が一致するという事実を示した論文である.この事実は,多元環の表現論の文脈ではクラスター圏における団傾対象の次元ベクトルが,対応する団代数の団の分母ベクトルに一致する(場合がある)という現象に対応する.また,これを利用して2本目の論文で部分的に解決したF行列による団の一意性も有限型とランク2の場合で証明している.fベクトルとdベクトルの定義は全く異なっており,そして一般には完全に一致することはないものの,様々な点で性質が類似している点は非常に興味深い.元々,Fomin-Zelevinskyの論文(Cluster algebras IV: Coefficients)にもfベクトルという名前を使ってはいないものの「fベクトルとdベクトルは実は一致しているんじゃないか?」という予想が載っており(Conjecture 7.17), この辺りの認識はこの論文が出た2006年当時から共有されているものだったらしい.その後,Fu-Kellerによる論文(On cluster algebras with coefficients and 2-Calabi-Yau categories)によりこの予想は否定的に解決されたが,「2つ前の論文で私が示したF行列の双対性とReading-StellaによるD行列の双対性を示した論文(Initial-seed recursions and dualities for d-vectors)を組み合わせることにより,有限型の場合については一致が示せるのでは?」と思いずっと試行錯誤していたところ,代数の研究集会に参加しているときにそれがついに完成した.そこまで大きな結果では無いが,自分の初めての単著として思い入れ深い.また,これをarXivにあげたところ先述のFu-Kellerの論文の著者であるFu氏とKeller氏の両者から貴重なコメントをいただく機会にも恵まれ,私の中では非常に印象深い出来事として記憶に残っている.


2. F-matrices of cluster algebras from triangulated surfaces
百合草寿哉との共同研究
Annals of Combinatorics 24 (2020), 649–695.| arXiv:1902.09317
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1本目の論文で定義したF行列は団に付随する行列として扱うことができるが,逆に「F行列から団が一意的に定まるか?」という問題を,点付き曲面から定まるクラスの団代数について示した論文.この一意性の予想は私の中では1本目の論文について書いているときから念頭にあり,この話を当時中西研に聴講に来ていた百合草氏にしたところ,「F行列は点付き曲面上の弧の交点数として実現されることがわかった(Combinatorial cluster expansion formulas from triangulated surfacesの定理1.8)ので,この情報から団(に対応する曲面上の弧)を完全に決定できると思う」という話をされ,共同研究が始まった.この問題の証明の根幹は「弧がどこで何回交わったかの情報のみから,元の弧がどこを通っていたかを特定する」という点にあるが,なかなかスマートな方法が思いつかず,「ええい,パターンは限られているんだから総当たりで調べてしまえ!」という泥臭い方法をとることになった.これがとても大変で,何度も心が折れそうになり別の方針を考えるがスマートな方針は思いつかない.結局,長い時間をかけてなんとか数え切り,結果として全ての弧が異なる交点数を与えることが確認され証明が終わった.実際に全てのパターンを数えている間と,検算して何度も間違ってないかを確認をしている時間は本当に地獄で,もう2度とやりたくないというのが本音である.ただ,おそらく音を上げてグダグダしていた僕よりも百合草氏の方が作業量は多く大変であったはずなので,彼には頭が上がらない.ちなみにこの論文は全部で47ページあるが,そのうち19〜44ページの26ページ分はその泥臭い計算である.


1. Duality between Final-Seed and Initial-Seed Mutations in Cluster Algebras
藤原祥吾との共同研究
SIGMA 15 (2019), 040, 24 pages. | arXiv:1808.02156
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団代数におけるF多項式と呼ばれる多項式について主要項の指数を取り出したF行列を定義し,それについての性質を述べた論文である. F多項式はシード変異するとすぐに項が爆発的に増えてしまう扱いが難しい多項式であるが,なんとかしてここから面白い性質が取り出せないかと思案していたのがこの研究の始まりである.ある日,この多項式の「主要項が一意的に定まる」という性質に注目し,この主要項の情報だけ抜き出してきて行列にすれば何かわかるんじゃないかと思い立った.当時,Nakanishi-Zelevinskyによる「団代数のC行列の転置が別の団代数のG行列に一致する」という双対性について示した論文(On tropical dualities in cluster algebras)を読んだ直後だったこともあり,特になんの根拠もないものの,「もしかしてF行列も転置してみたら同じような双対性が成り立つのでは?」と思いA2型団代数で計算してみたところこの思惑は当たっており,この後紆余曲折あってその定理を示すに至った.思惑が当たっていることに気づいた瞬間と,同期である藤原氏の力添えのもとでこれを証明できた時の感動は筆舌に尽くし難いものがあった.


学位論文

修士論文(修正版,PDF): 団代数におけるF行列 (日本語)
博士論文(リポジトリに飛びます): F-matrices in cluster algebras and their applications

その他
学振DC1申請書類(2019年度不採用,最終ページはDC2とほぼ同じなためそちらを見てください)
学振DC2申請書類(2020年度採用)
学振PD申請書類(2022年度採用)